第九

ベートーヴェン  交響曲第9番


 初演は1824年5月7日作曲者自身の指揮によって行われています。

 しかし、この時すでに聴覚を失っていた作曲者を補佐するため

 ウムラウフという指揮者が隣に立ち 実際の指揮を担当、

 コンサートマスターのシュバンツィヒもこれを補って演奏されたと

 伝えられています。

 この初演でアルト独唱を務めたウンガーは、

 その夜のコンサートの模様を後に次のように感動的に回想しています。

 
 「演奏が終わった瞬間、
  全ての人々の目には涙が光っていました。
  ベートーヴェンは拍手に取り囲まれていたにもかかわらず、
  おそらく何も聴こえなかったのでしょう。
  聴衆に背を向けたまま まだ指揮棒を振り続けていました。
  たまりかねて私が彼を熱狂する聴衆のほうへ向けると、
  聴衆はこの大作曲家が、
  実はひとつの音すらも聴くことが出来なかったと気づくのです。
  やがて会場は同情と称賛の嵐に包まれ、
  大声で泣き出す者も現れた。
  そして、その歓呼の声は
  永遠に消え去ることがないように思われました。」



  カラヤン名演集より 諸石幸生:著
  
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